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Violin, Scrollavezza & Zanrè, Parma 2026 (after Pietro Guarneri di Mantova)
イタリア・パルマの製作伝統を受け継ぐScrollavezza & Zanrèによる、2026年製の特別なヴァイオリン。 本作は、17世紀末から18世紀前半にかけてマントヴァで活躍した製作家、Pietro Guarneri(Pietro Guarneri di Mantova)の作品に着想を得たモデルです。今回、Sirena Fine Violinsのために特別に製作されたこの一挺には、Pietro Guarneriの装飾楽器を思わせる、ユリの紋章(Fleur-de-Lis)をモチーフとした装飾が施されています。上下のコーナー付近にそれぞれ配置された装飾は、楽器の輪郭やパーフリングと調和しながら、通常のヴァイオリンにはない独特の気品を与えています。 装飾は単なる外観上のアクセントではなく、歴史的モデルの個性を現代の製作へと取り入れる重要な要素となっています。 裏板には、斜め方向へ豊かな杢が流れる美しい一枚板のメイプルを使用。黄金色から温かな琥珀色へと変化する透明感のあるニスが、木材の表情を鮮やかに引き立てています。表板には繊細な木目を持つスプルースが用いられ、伸びやかなf字孔、明確に整えられたコーナー、丁寧なエッジワークなど、細部に至るまで製作家の美意識が感じられます。 本作は、2026年に開催された国際弦楽器見本市 Cremona Musica において、Scrollavezza & Zanrèのブースに展示されました。会期中には多くの来場者の目に触れ、製作家自身によって紹介された作品でもあります。
Violin, Toshiyuki Matsushita, Cremona 1990
Violin, Iotti & Vibe, Parma 2026
Coming in November 2026...
Violin - late Baroque-style, Iotti & Vibe (after Domenico Montagnana), Parma 2027
A special Baroque violin is coming in February 2027...
Violin, Ugo Medde, Cremona 2001
Viola(40.8㎝), Benoit Bonten, 2026 Livinhac-le-Haut (France)
Benoit Bonten(ブノワ・ボンテン)は、1983年ベルギー・Verviers生まれ、現在フランス南部Aveyronを拠点に活動する弦楽器製作家です。 2001年、滞在先のブエノスアイレスでOmar Nigrelliの工房に出入りしたことをきっかけに楽器製作の世界へ入り、帰欧後はフランスのÉcole Nationale de Lutherie de Mirecourtで本格的に製作を学び、2006年に卒業。その後Brussels、Maastricht、Barcelonaなど各地の工房で経験を積み、2008年にはスペイン・Santiago de CompostelaでGonzalo Bayoloのアシスタントとなりました。現在はLivinhac-le-Hautに自身の工房を構え、特にヴィオラとチェロの製作を中心に活動しています。 Bontenのヴィオラは、楽器としての豊かな響きを追求しながら、奏者にとって無理のないサイズと演奏性を両立させようとする点も特徴のひとつです。実際に40cm前後から41cmを超えるものまで様々なサイズの作品が製作され、比較的コンパクトな作品についても、そのレスポンスやプロジェクションが高く評価されています。 今回のヴィオラは、Benoit Bonten自身のPersonal Modelによる2026年の新作です。 製作段階から本人より仕上がり、特に音について非常に自信のある作品との連絡を受けております。 ヴィオラとチェロを専門的に製作してきたBontenが、自身のモデルでどのような音と演奏性を形にしたのか。現代フランスのヴィオラ製作を知るうえでも、ぜひ実際に手に取っていただきたい新作です。
Viola (37.5㎝), Old Italian Viola (labeled:Salvatore Carcassi), in Tuscany 1850 - 70
Violin, Giuseppe Barberi, Forte dei Marmi 1985
Giuseppe Barberi(ジュゼッペ・バルベリ)は、イタリア・トスカーナ州の海辺の町 Forte dei Marmi で製作活動を行った弦楽器製作家です。 本作のラベルには、 “Giuseppe Barberi / allievo di Piero Badalassi / Fece in Forte dei Marmi nell’Anno 1985” と記されており、Barberi自身が**Piero Badalassiの弟子(allievo)**であったこと、そして1985年にForte dei Marmiで製作されたことが示されています。 Badalassiのもとで学んだという製作背景を持つ本作は、1980年代のトスカーナにおける弦楽器製作の一例としても興味深いヴァイオリンです。 裏板には、細かく規則的でありながら力強い杢を持つ二枚板のメイプルが用いられています。その杢は側板やスクロールにも美しく現れ、楽器全体に統一感を与えています。 ニスは透明感のある黄金色からアンバー・オレンジ系の色調で、メイプルの杢を鮮明に浮かび上がらせています。光の当たり方によって木材の表情が大きく変化する、非常に印象的な外観です。 表板には比較的均整の取れたスプルースが用いられ、細身で伸びやかなf字孔、丁寧に収められたパーフリング、明瞭なエッジワークとコーナーなど、細部まで整った製作を見ることができます。 スクロールにも裏板・側板と呼応する杢のあるメイプルが用いられ、黄金色のニスとともに本作の明るく端正な印象を形成しています。 Piero Badalassiの弟子であることを明記したラベルを持つ、1985年Forte dei Marmi製のGiuseppe Barberi。 トスカーナの製作背景と、選ばれた木材の美しさをあわせて楽しむことのできる一本です。 本楽器には、Alberto Giordano氏による証明書が付属します。
Violin, Pietro Remo Sgavetta, Fidenza(Parma) 1984
Pietro Remo Sgavetta(ピエトロ・レモ・スガヴェッタ)は、イタリア・エミリア=ロマーニャ州Fidenzaを拠点に活動した弦楽器製作家です。 Sgavettaについて現在確認できる資料は決して多くありませんが、ParmaのCasa della Musicaが編纂する音楽家・製作家の資料にもその名が収録され、Fidenzaの地域史には、独学で弦楽器製作を身につけた優れた製作家であったことが記録されています。また、1995年にFidenzaで製作されたチェロも現存しており、ヴァイオリンのみならずチェロの製作にも取り組んでいたことが確認できます。 今回ご紹介するヴァイオリンは、1984年にFidenzaで製作された一挺です。 二枚板の裏板には、細かく規則的な杢を持つメイプルが使用され、側板やスクロールにも美しい杢が現れています。透明感のあるゴールデン・オレンジからアンバー系のニスによって木材の表情が明瞭に浮かび上がり、楽器全体に明るく統一感のある外観を与えています。 表板には比較的均整の取れたスプルースが使用され、細身で伸びやかなf字孔、明瞭なエッジワーク、端正に収められたパーフリングを見ることができます。特に裏板の均整の取れた杢と、側板からスクロールに至るまでの材料の美しさは、本作の外観を特徴づける要素のひとつです。 内部のラベルには “Pietro Remo Sgavetta / Fecit in Fidenza (Pr) / Anno 1984” と記され、その下には製作者自身によるものと思われる手書きの記載も確認できます。 本楽器には、Alberto Giordano氏による証明書が付属します。 著名な製作都市だけに限らず、各地域に独自の製作家が存在した20世紀後半のイタリア。その中でFidenzaに工房を構え、独学で製作を続けたPietro Remo Sgavettaの仕事を現在に伝える、興味深い一挺です
Violin, Guido Maraviglia, Pistoia 1988 - “Valente”
Guido Maraviglia(1908–2001)は、イタリア・トスカーナ州Pistoiaを代表する20世紀の弦楽器製作家の一人です。 木工職人であった父の工房で幼い頃から木に親しみ、1924年、16歳の時に最初のヴァイオリンを製作。その後、PistoiaのPontelungoを拠点として長い製作活動を続けました。古典的なクレモナ派やフィレンツェ派のモデルを基礎とする一方、自身のモデルにも取り組み、ヴァイオリンだけでなくヴィオラやチェロなど数多くの弦楽器を残しています。現在では、20世紀トスカーナの弦楽器製作を語るうえで重要な製作家の一人として位置づけられています。 Maravigliaの製作における興味深い特徴のひとつが、完成した楽器にそれぞれ名前を与えることがあった点です。Pistoiaに残る資料によれば、完成後に現れた楽器の特徴などに応じて名前を付け、それを内部ラベルに記していました。 今回ご紹介するヴァイオリンは、1988年にPistoiaで製作された一挺です。ラベルには製作者名、製作地、年号とともに、手書きで**「VALENTE」**と記されており、Maravigliaが個々の作品に与えた名前を現在まで伝えています。 二枚板のメイプルによる裏板には美しい杢が広がり、透明感を保ったオレンジから赤褐色のニスが木材の表情を引き立てています。比較的伸びやかなf字孔と明瞭なエッジワークを備え、長年木工に携わったMaravigliaらしい、落ち着きのある製作を見ることができます。 また、本楽器にはEric Blot氏による証明書が付属します。 1924年に最初のヴァイオリンを製作してから長いキャリアを重ねたMaravigliaにとって、本作が製作された1988年はすでに80歳を迎える年にあたります。若い時代からPistoiaで積み重ねてきた製作経験を背景に生み出された、彼の晩年期を伝える興味深い一挺です。
Violin, Maurizio Spignoli, Bologna 1987/88
Maurizio Spignoli(マウリツィオ・スピニョーリ、1958–2007)は、20世紀後半のボローニャにおける弦楽器製作の伝統を受け継いだイタリアの製作家です。 音楽家としての背景を持つとともに、ボローニャで弦楽器製作を学び、20世紀ボローニャ派を代表する製作家 Otello Bignami(1914–1989) に師事しました。BignamiはGaetano Pollastriから受け継いだボローニャの製作伝統を次世代へ伝えることに尽力した人物で、Spignoliはその最後期の弟子の一人として記録されています。 Spignoliの作品は、ボローニャの伝統的なモデルを基礎とするものとして知られています。1990年にはBagnacavalloの製作コンクールでもメダルを獲得しており、Bignamiから次世代へと受け継がれたボローニャ派の流れの中に位置づけられる製作家です。 今回ご紹介するヴァイオリンは、1987年から1988年にかけてBolognaで製作された一挺です。 ラベルには “SPIGNOLI MAURIZIO / ALLIEVO O. BIGNAMI / fece in Bologna 1987/88” と記され、自らがOtello Bignamiの弟子であることを明記しています。また、裏板のボタンおよびエンドピン付近には、円で囲まれた特徴的な「S」のブランドを見ることができます。 二枚板のメイプルによる裏板には細かく明瞭な杢が広がり、同様に美しい杢を持つ材が側板やスクロールにも用いられています。透明感の高いゴールデン・オレンジからアンバー系のニスが木材の表情を鮮明に浮かび上がらせ、楽器全体に明るく統一感のある外観を与えています。 表板には均整の取れたスプルースが用いられ、細身で伸びやかなf字孔、明瞭なエッジワークとコーナー、丁寧に収められたパーフリングなど、随所に端正な仕事を見ることができます。 さらに本作は、同年代の他の楽器と共に実際に比較試奏した中でも、特に音色と演奏性に魅力を感じた一挺です。これは製作者の作品全般についての評価ではなく、あくまで今回の個体についての当店での印象ですが、外観や製作背景だけでなく、演奏する楽器としてもぜひ実際にお試しいただきたい一本です。 本楽器には、Alberto Giordano氏による鑑定書が付属します。
Violin, Assunto Carloni, Forli 1982
Assunto Carloni(アッスント・カルローニ)は、1932年イタリア・エミリア=ロマーニャ州Forlì生まれの弦楽器製作家です。 Forlìを拠点として製作活動を行い、その作品は現在も国際的なオークションや楽器アーカイブに記録されています。特に1982年には、Bagnacavalloで開催された製作コンクールにおいてヴァイオリン部門の金賞を受賞したとされ、彼の製作歴を語るうえで重要な年となりました。 今回ご紹介するヴァイオリンは、まさにその1982年にForlìで製作された一挺です。 ラベルには “ASSUNTO CARLONI / Forlì - P.le Benefattori, 3 / 1982” と記され、製作者自身の署名が確認できます。また、裏板上部のボタンにはCarloniを示す「CA」のブランドが施されています。 本作には細かく規則的な杢を持つ一枚板のメイプルが裏板に用いられ、その美しい杢は側板やスクロールにも見ることができます。透明感のあるオレンジから赤褐色のニスが木材の表情を鮮明に浮かび上がらせ、全体に温かみのある外観を与えています。 表板には比較的均整の取れたスプルースが用いられ、伸びやかなf字孔、明瞭なエッジワーク、端正に収められたパーフリングなど、丁寧な製作を見ることができます。 Carloniが製作コンクールで評価を受けた1982年その年に製作された作品であることも含め、彼の製作活動を知るうえで興味深い一挺です。 本楽器には、Alberto Giordano氏による鑑定書が付属します。
Violin, Virgilio Cremonini, Crevalcore 2001
Virgilio Cremonini(ヴィルジリオ・クレモニーニ)は、1934年生まれ、イタリア・エミリア=ロマーニャ州Crevalcoreを拠点に活動した弦楽器製作家です。 幼い頃、祖父からヴァイオリンへの興味を受け継ぎ、第二次世界大戦後にはModenaでヴァイオリンを学びました。しかし、家族を支えるため仕事に就く必要があり、一度は楽器から離れることになります。その後、自ら事業を興して成功を収める一方、ヴァイオリンへの情熱を失うことはありませんでした。1980年代初頭、Pieve di Centoで製作家Carlettiと出会ったことを契機に弦楽器製作を学び、本格的にヴァイオリン製作へ取り組むようになります。 今回ご紹介するヴァイオリンは、2001年にCrevalcoreで製作された一挺です。 この2001年はCremoniniの製作活動を知るうえでも興味深い年です。同年に開催された若手ヴァイオリニストのための「Premio nazionale Bruno Zanella」では、Cremonini自身が製作したヴァイオリンが審査員特別賞として授与されたことが公式記録に残されています。 本作には、透明感のある赤褐色からオレンジ・レッドのニスが施され、その下に一枚板のメイプル裏板の美しい杢が広がります。裏板だけでなく側板やスクロールにも印象的な杢を持つ材が使用され、楽器全体に統一感のある外観を与えています。 表板には比較的均整の取れたスプルースが用いられ、伸びやかなf字孔、明瞭なコーナーとエッジワーク、端正に収められたパーフリングなど、随所に丁寧な仕事を見ることができます。 ラベルには製作者自身の名とともに、“fece in Crevalcore Anno 2001” と記されています。 一度はヴァイオリンから離れながらも、長年持ち続けた情熱から再び製作の道へと進んだVirgilio Cremonini。その歩みと、エミリア=ロマーニャにおける地域の製作文化を現在に伝える興味深い一挺です。 Alberto Giordano氏による鑑定書が付属します。
Violin, Annibale Zuffa, Solarolo 1986
Annibale Zuffa(アンニバレ・ズッファ)は、イタリア・エミリア=ロマーニャ州のSolaroloを拠点に活動した弦楽器製作家です。1980年代を中心とする作品が知られており、イタリアの弦楽器製作者資料や現在の楽器アーカイブにもその名と作品が記録されています。 今回ご紹介するヴァイオリンは、1986年に製作された一挺です。 明るいゴールデン・アンバーを基調とした透明感のあるニスの下には、二枚板のメイプルによる美しい杢が広がります。見る角度や光の方向によって裏板の杢が大きく表情を変えるのも、この楽器の印象的な特徴です。 表板には比較的整った木目のスプルースが用いられ、端正に切られたf字孔、輪郭のはっきりとしたコーナー、エッジに沿って丁寧に収められたパーフリングなど、全体としてすっきりとした製作を見ることができます。スクロールも同じ明るい色調のニスでまとめられ、楽器全体に統一感のある仕上がりとなっています。 製作から約40年を経た現在も、1980年代のイタリアン・ヴァイオリンならではの雰囲気をよく伝える一挺です。 本楽器には、ジェノヴァの弦楽器製作家・鑑定家 Alberto Giordano氏による鑑定書が付属します。
Violin, Bruno Tondo, Udine 1986
Bruno Tondo(ブルーノ・トンド)は、イタリア北東部Friuli-Venezia Giulia州、Udine周辺を拠点に活動した弦楽器製作家です。 独学から製作を始めたのち、弦楽器製作について学びを深め、イタリア国内外の製作家との交流を通じて自身の技術を発展させました。Feletto Umbertoを拠点として活動し、その名はUdineおよびFriuli地方における20世紀の弦楽器製作の記録にも残されています。 製作においては古典的なクレモナの名器を重要な基礎とし、とりわけ**Antonio StradivariとGiuseppe Guarneri “del Gesù”**の作品から着想を得たモデルを製作したとされています。主としてヴァイオリンを手掛ける一方、ヴィオラ、チェロ、コントラバスも製作していました。また、黄褐色系のニスを用いることも彼の作品の特徴として記録されています。 今回ご紹介するヴァイオリンは、1986年にUdineで製作された一挺です。 端正な輪郭を持つモデルに、比較的長く直線的なステムを持つf字孔、明瞭なコーナーとエッジワークが組み合わされています。二枚板の裏板には細かく均整の取れた杢を持つメイプルが使用され、透明感のある黄褐色からアンバーブラウンのニスが、その木目を美しく引き立てています。 ラベルには “Bruno Tondo / fece in Udine / 1986” と記され、製作者自身の署名も確認することができます。 クレモナの古典的なモデルを製作の基礎としながら、イタリア北東部Friuliの地で製作活動を続けたBruno Tondo。クレモナやトスカーナとはまた異なる、20世紀後半のイタリア地方製作の広がりを知るうえでも興味深い一挺です。 本楽器には、ジェノヴァの弦楽器製作家・鑑定家 Alberto Giordano氏による鑑定書が付属します。
Violin, Ovidio Giarelli, Carrara 1970
Ovidio Giarelli(1921–2006)は、イタリア・トスカーナ州Carraraに生まれ、生涯にわたり同地を中心に活動した弦楽器製作家です。 幼少期からヴァイオリンを学ぶとともに、若くしてCarraraの製作家 Cesare Maggiali の工房に出入りし、わずか13歳で最初のヴァイオリンを製作したと伝えられています。その後、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロを製作しましたが、残された作品の数は比較的限られています。 Giarelliの製作を理解するうえで特に重要なのが、20世紀トスカーナを代表する製作家 Igino Sderci(1884–1983) からの影響です。Giarelli自身がSderciの製作を高く評価し、その作品を様式的な手本としていたことが記録されており、Sderciについての専門資料でも、Giarelliの作風にはその影響を明確に見いだすことができると指摘されています。 また、Giarelliは木材の扱いにも独自の考えを持っていました。十分に自然乾燥した材を選び、楽器を白木の状態まで完成させた後、さらに数年間置いてからニスを施したと伝えられています。生産数を追うのではなく、時間をかけて一本ずつ製作する姿勢も彼の作品を特徴づけています。 今回ご紹介するヴァイオリンは、Carraraで1970年に製作された一挺です。 写真からも、端正に切られたf字孔、明瞭なエッジワークとパーフリング、そして木目を美しく浮かび上がらせる透明感のある赤褐色のニスを見ることができます。Giarelliの1980年製カルテットについても、「明確に切られたf字孔」「正確なパーフリング」「深いエッジのフルーティング」「木目を際立たせる透明な赤色のニス」と記録されており、今回の個体にも彼の成熟した製作に通じる特徴を見ることができます。 20世紀トスカーナの製作伝統、そしてIgino Sderciへとつながる様式的背景を現在に伝える、Ovidio Giarelliの興味深い作品です。 本楽器には、ジェノヴァの弦楽器製作家・鑑定家 Alberto Giordano氏による鑑定書が付属します。
Violin, Vittorio Rosti, Castelfranco Emilia (Modena) 2005 - IIª Serie
Vittorio Rosti(1937–2015)は、イタリア・モデナ県Castelfranco Emiliaを拠点に活動した弦楽器製作家です。若い頃から木工職人、彫刻家として木材に親しみ、長年培った木工技術を背景に、1990年代よりGiuseppe Goldoniの指導を受けながら本格的に弦楽器製作へ取り組みました。その作品は、エミリア=ロマーニャ地方の製作伝統を受け継ぐものとして知られています。 Rostiは材料の選定にも強いこだわりを持ち、特に表板に用いるスプルースについては、自らVal di Fiemmeへ赴いて材を探したことが伝えられています。木工職人としての長い経験を基礎とした、力強さと手仕事の個性を感じさせる製作も彼の作品の魅力です。 今回ご紹介するヴァイオリンは、2005年にCastelfranco Emiliaで製作された「IIª Serie」の一挺です。 ラベルには製作地と年、IIª Serieの表記があり、裏板上部のボタンにはRostiのイニシャル「RV」が施されています。同様の表記を持つ2005年製作品は、国際的なアーカイブにも記録されています。 明るい琥珀色からオレンジブラウンへと変化する透明感のあるニスの下には、二枚板の美しい杢を持つメイプルが映え、表板の伸びやかなf字孔、輪郭のはっきりとしたコーナー、端正なパーフリングなど、Rostiの個性を感じさせる仕上がりです。 エミリア=ロマーニャの製作文化と、長年木と向き合ってきた職人としての経験。その双方が感じられる、20世紀末から21世紀初頭のイタリアン・ヴァイオリン製作を伝える興味深い作品です。 本楽器には、ジェノヴァの弦楽器製作家・鑑定家 Alberto Giordano氏による鑑定書が付属します。
Violin, Paolo Erba, Mariano Comense 1919
Paolo Erba(1874–1927)は、19世紀末から20世紀初頭にかけて、北イタリア・ロンバルディア州のMariano Comenseを拠点に活動した弦楽器製作家です。 1888年頃から製作活動を始めたとされ、20世紀初頭には製作家として評価を確立。ローマのSanta Ceciliaに関連するコンクールで複数の受賞歴を持ち、1904年にはロンドンで展示された弦楽四重奏一式で銀メダルを受賞したことが記録されています。 Erbaの経歴を考えるうえで興味深いのが、近代イタリア製作に大きな影響を与えたLeandro Bisiach(1864–1945)との関係です。John Dilworthによる記録では、Erbaは1918年頃から1920年頃にBisiachを訪れ、ともに仕事をしたとされています。 今回ご紹介するヴァイオリンは、その時期とまさに重なる1919年、Mariano Comense製作の一本です。 この年代的な一致は非常に興味深いものですが、本作そのものがBisiach工房で製作されたことを示すものではありません。あくまでErbaの製作活動における重要な時期に生み出された作品として捉えるのが適切でしょう。 楽器内部には、“ERBA PAOLO fece in MARIANO COMENSE 1919” と記されたオリジナルラベルが残されています。 裏板には、中程度からやや細めの比較的規則的な杢を持つ二枚板のメイプルが用いられ、杢は中央から外側へわずかに上がるように広がっています。 表板は二枚板のスプルースで、比較的広めの木目が外側に向かってさらに広がります。横板とスクロールには裏板と同様のメイプルが用いられ、全体をオレンジ色のニスが覆っています。 細身で伸びやかなf字孔、明確なエッジワーク、美しく杢の現れた裏板など、100年以上を経た現在もPaolo Erbaの仕事を随所に観察することができます。 そして何より、この個体で特に印象的なのが音そのものの魅力です。 当店で実際に演奏・確認した印象では、十分な音量を備えながら、単に音が大きいだけではなく、音の芯が明確で、距離が離れても存在感を失いにくい、遠くまでよく通る響きを持っています。 製作者名や製作年代、資料的価値だけではなく、100年以上の時を経た現在も、十分な音量と遠くまで届く力強い響きを備えた、演奏する楽器としてぜひ実際にお試しいただきたい一本です。 本作には、Eric Blot SRLによる2019年7月17日付の鑑定書が付属します。
Violin, Giulio Degani, 1907 Venezia
Giulio Ettore Degani(1875–1959)は、近代ヴェネツィア派を代表する製作家の一人。父は近代ヴェネツィア派の礎を築いたEugenio Deganiで、幼少期からその工房で製作を学び、1901年の父の死後、ヴェネツィアの工房を継承しました。 父の伝統を受け継ぎながらも、Giulioは次第に独自のスタイルを確立。精緻なエッジワークやスクロール、特徴的なモデルとニスなどに優れた個性を示し、その製作は20世紀初頭から渡米する1915年頃までに最盛期を迎えたと評価されています。1915年にはアメリカへ移住し、Wurlitzerのニューヨークおよびシンシナティの工房で活動しました。 今回ご紹介するヴァイオリンは1907年、ヴェネツィアで製作された一挺。 Giulioがアメリカへ渡る以前、その製作活動が充実していたイタリア時代の作品です。 二枚のメイプルによる裏板には明瞭で美しい杢が広がり、オレンジからゴールデン・ブラウンへと変化する温かみのあるニスをまとっています。さらに、三本の黒と二本の白からなる五層のパーフリングも、この楽器を特徴づけるディテールのひとつです。ボディ長は約360mmとやや大ぶりで、Deganiならではの個性的な造形と、ヴェネツィア派の伝統を感じさせる一挺です。
Violin, Carlo Radrizzani, 1942 Vevey (Switzerland)
Carlo Radrizzani(1896–1986)は、イタリアにルーツを持ち、スイス・ヴヴェイ(Vevey)を拠点に活動した弦楽器製作家です。製作家の家系に生まれ、父Angelo Radrizzaniと伯父Alessandro Radrizzaniから製作を学び、その伝統を次世代へと受け継ぎました。 Radrizzani家の製作を辿るうえで興味深いのが、近代ヴェネツィア派を築いたDegani家とのつながりです。AlessandroはヴェネツィアでEugenio Deganiに学んだことが記録され、AngeloについてもDeganiのもとで研鑽を積んだとされています。こうした北イタリアで培われた製作の伝統は、その後スイスへと移ったRadrizzani家の作品にも受け継がれていきました。 今回ご紹介するヴァイオリンは、1942年にCarlo Radrizzaniによって製作された一挺です。 現在当工房にある1907年製Giulio Deganiのヴァイオリンと実際に比較すると、その歴史的なつながりを思わせる興味深い共通点を見ることができます。モデルの構成をはじめ、アーチングの考え方、エッジ周辺の造形、そしてスクロールの作りなど、随所にDeganiの製作を想起させる特徴が認められます。 もちろんCarloは単に先人のスタイルを模倣したのではなく、一族から受け継いだ製作伝統を自身の作品として発展させています。DeganiからRadrizzani家へとつながる製作の系譜と、イタリアの伝統がスイスへ渡り次世代へ受け継がれていく過程を、実際の楽器から感じ取ることのできる興味深い作品です。
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